デイジー |
作品 火口箱 ちょうちょ デイジー |
まあ、お聞きなさい!田舎の、本道近くに一軒の農家が立っていました。おそらくあなたも近くを通り、見たことがあるでしょう。家の前に、ペンキ塗りの木製の柵がある小さな花壇がありました。近くには溝があり、その新緑の土手に小さなデイジーが生えていて、その上に太陽が、花壇の立派な花と同じように、暖かく明るく照らしていました。それでデイジーはよく繁っていました。ある朝花がすっかり開き、小さな雪白の花弁が太陽の光線のように黄色の中心の周りにありました。デイジーは、芝草の中で誰も見る人がいないことや、自分がみすぼらしい蔑まれる花なことも気になりませんでした。それどころか、とても幸せで、太陽の方を向き、見上げて、高い空のひばりの歌に耳を傾けていました。![]() 近くの庭には大きく立派な花々がたくさん生えていて、妙なことに、香りが少ない花ほど横柄で高慢でした。牡丹はバラより大きくなるため身を膨らませました、が、大きさが全てではありません!チューリップは1番きれいな色をしていて、自分でもそれを良く知っていました。だって、人によく見えるようにロウソクのように真っすぐ立っていたからです。誇りのために彼らは小さなデイジーを見ませんでした。デイジーの方は彼らを見渡して「彼らは何と豊かで美しいのでしょう!きっとあのきれいな鳥は彼らのところに飛んで訪れるわ。良かった!私は近くにいて、とにかく素晴らしいものを見られるわ」と思いました。デイジーがまだ考えているうちに、ひばりは「チ―」と鳴いて、飛んで下りて来ました。ですが、牡丹やチューリップにではなく、草の中のみすぼらしいデイジーに、でした。デイジーの喜びは大変なもので、どう考えたらいいか分かりませんでした。小鳥はデイジーの周りをぴょんぴょん跳んで歌いました。「草は何と素晴らしく柔らかく、金の中心と銀のドレスの、何と愛らしい小花がここに生えているのでしょう」デイジーの黄色の中心部は確かに金のように見えたし、小さな花弁は銀のように明るく光っていました。 デイジーは何と嬉しかったことでしょう。夢にも思わないことです。小鳥はくちばしでデイジーにキスし、歌って、それから再び青空に上がっていきました。デイジーが我に返ったのは15分以上も経ってからでした。恥ずかしさ半分、だが心の中では喜び、デイジーは庭の他の花々を見渡しました。確かに彼らはデイジーの喜びとなされた名誉を目にしていました。彼らはデイジーの嬉しさが分かりました。しかし、チューリップたちはこれまで以上にこわばって立っていて、顔は尖って赤くなっていました。怒っていたからです。牡丹たちは不機嫌でした。彼らが話せなくて良かった。さもないと、デイジーにたっぷりお説教したことでしょう。小花は、彼らが居心地が悪く思っているとよく分かって、心底同情しました。 この後まもなく、一人の少女が、大きな鋭いナイフを持って、庭にやってきました。チューリップのところに行き、次々と切り取り出しました。「うっ!」デイジーは溜息をつきました。「ひどい。もう彼らはダメだわ」 少女はチューリップを持ち去りました。デイジーは自分が外側にいてただの小花に過ぎなくて良かったと思いました――とてもありがたく思いました。日暮れに花弁を閉じて眠り、一晩中太陽と小鳥の夢をみました。 翌朝、空気と光にもう一度柔らかい花弁を、小さな腕のように、伸ばした時、デイジーは小鳥の声を聞き取りました。だが、小鳥の歌はとても悲しそうでした。実際、可哀そうな鳥には悲しい訳があったのです。というのは、小鳥は捕らえられ、開いている窓近くのカゴに入れられていたからです。ひばりは、愉快に飛び回れた楽しい日々や、野の新緑のトウモロコシや、ほぼ雲にまで舞い上がった時のことを歌いました。哀れなひばりはかごの虜でとても不幸でした。小さなデイジーは助けたいと大いに思いましたが、何ができようか。実際、そんな小さな花に見つけることはとても難しかったのです。デイジーは、周りのあらゆるものがどんなに美しいか、太陽がどんなに暖かく降り注ぐか、自分の花弁がどんなに見事に白いかをすっかり忘れました。ただ哀れな囚われの鳥しか考えられませんでした。それに対し何もしてあげられないのです。その時、二人の少年が庭から出てきました。その一人は、少女がチューリップを切ったのと似た、大きな鋭いナイフを持っていました。少年たちは小さなデイジーにまっすぐ向かって来ましたが、デイジーには何の用か分かりませんでした。 「ここにひばり用に良い芝があるぞ」と少年の一人が言って、デイジーの周りを四角に切り取り始めました。それでデイジーは草の真ん中に残りました。 「花を抜けよ」ともう一人が言い、デイジーは恐怖で震えました。だって、抜かれることは死ぬことでした。四角い芝と一緒に哀れな囚われの小鳥のかごに行く予定なので、デイジーはとても生きたかったのです。 「いや、残しておこう」もう一人は言いました。「とてもきれいに見えるぞ」 そこでデイジーはそのままで、ひばりのカゴに運ばれました。哀れな小鳥は自由が無くなったことを嘆き、ワイヤーに羽ばたきしていました。デイジーは、どんなに願っても、話したり慰めの言葉を発したりできませんでした。そうして午前が過ぎました。 「水がない」囚われの小鳥は言いました。「皆出かけてしまい、私に飲み物をくれるのを忘れてしまった。喉がカラカラで焼け付くようだ。体の中に火と氷があるみたいで、とても蒸し暑い。ああ、私は死ぬんだ、そして暖かい太陽や新緑の草地、神が創ったあらゆる美しさとお別れなんだ」そうして少し元気をつけるために、草に口ばしを差し込みました。すると小さなデイジーに気づき、それに頷き、口ばしでキスをして言いました。「可哀そうなお花さん、あなたもここでしぼむのね。外で楽しんだ全世界と交換にもらったのは、あなたと草だけよ。草の葉1枚1枚が私にとって緑の森で、あなたの白い花弁1枚1枚がかぐわしい花なの。ああ!あなたを見ると失ったものを思い出すばかりだわ」 「可哀そうなひばりを慰めることができたらいいのに」デイジーは思いました。デイジーは葉の一枚も動かせませんでしたが、優美な花弁の香りが漂い出て、それはそのような花々に普通あるよりずっと強いものでした。小鳥はそれに気づき、乾きで死にかけていて、苦しんで草の葉を千切ったものの、花には触れませんでした。 夜が来て、誰も哀れな小鳥に水を一滴も持っていきそうもありませんでした。小鳥は美しい翼を広げ、悶えてパタパタさせました。微かで悲し気な「チッ、チッ」を発することができるだけで、やがて小さな頭を花の方に曲げ、胸は切望と憧れで張り裂けました。花は、前夜と同じく、花弁を折りたたんで眠れませんでした。デイジーは哀しく散りました。少年たちは翌朝やっと来ました。死んだ小鳥を見ると、激しく泣き始め、小鳥のために良い墓を掘り、花で飾りました。小鳥の体はきれいな赤い箱に置かれました。王室の栄誉を与えて小鳥を埋葬したかったのです。彼らは、小鳥が生きてさえずっていた間は小鳥を忘れ、カゴの中で苦しませておきました。今は、小鳥のことで泣き、花で覆いました。デイジーが入っている芝の切片は、ほこりっぽい本道に捨てられました。あんなに小鳥を思いやり、慰めたいとあんなに望んだ花のことを、誰も考えませんでした。 原文 https://www.gutenberg.org/files/27200/27200-h/27200-h.htm#daisy ![]() |