修学旅行
修学旅行の引率は何回あったろうか?教員をしていない友人と話して、「もしかして教師をしているとタダで旅行できるからいいな、と羨ましく思っていない?」と訊いたら、「え、違うの?」と聞き返された。違うんですよ。
引率に行きたがる教師はほとんどいない。だからそれぞれの学校で順番で行くことが多い。担任をしていれば必ず引率にあたるのだが、例外もあるけれどその担任も順番のようになっている。何故行きたがらないか、というと、自分の子どもが小さい場合にどうするか?ということがあるし、事実上勤務時間が長いし、生徒の安全に気を配らなくてはいけない等々。
ホテルの部屋割りで、女子が3階、男子が2階、としたときがある。消灯時間を過ぎて、教員は廊下で部屋の出入りを見張って交替で立ち番。ところが、女子の部屋で男子の話声がするのだ。どうして入ったか?2階の窓から庇を伝って3階の窓へ...。落ちなくてよかった。そのあとはお説教と罰に正座させましたよ。正座は体罰にあたってやっちゃいけないんですけどね。
体調を崩す生徒がいる。一度は救急車で病院へ付き添って行った。膀胱炎をこじらせて恐ろしいほどの出血。修学旅行に来る前から調子が悪かったのに、どうしても参加したいから隠していたのだという。点滴をして、ずっと待っていた。結局「時間がかかるので先生は帰ってください」となって夜9時?頃ホテルへ。夕食は冷たくなって刺身なんて黒ずんでた(^^;
別のときは最寄りの医院へ、この生徒は風邪。やはり夕食はさめてしまっていた。次の日、もう一度来てください、と言われ、早朝に出発なので、医師の時間外に診てもらった。朝食を食べている暇はなかった。一回目の見学地でバスがとまったとき添乗員が気をきかせて「先生、朝食まだでしょ?」ともってきたのが肉まん一個。---納得いかないのは、卒業の時、クラスで寄せ書きした色紙をお世話になった先生にともってきたのだが、何故かその生徒だけ悪口を書いてあった。関わりのあったのはこの時だけなのにどうして???
北海道へ行ったときは、死なないまでも重傷くらいにはなるか、とヒヤッとした事件がおこった。目をつりあげた男子生徒30人くらいが怒涛のごとく押し寄せてきたのである。そのときは事情がわからなかったが、大変なことになると咄嗟に思ったので、両手を広げて「ダメ―!」と抑えたのだ。先頭の子は勿論私にぶつかったけれど、急ブレーキをかけ、後ろの子たちも背中に頭をぶつけながら急ブレーキ。よくぞ止まってくれたよ、今から思うと可笑しいけれど。あれを止めなかったら大乱闘になってたかも。
施設の問題。その時は子どもの数が多く、クラス定員も48名、総勢400名ほどの生徒。宿舎について入浴となったら、「生理だから先生の部屋でお風呂を使わせて」と女子生徒。ところが、まもなくバスタオルで体を包み、「熱湯しか出てこない」とのこと。それからが大変で、部屋の電話は鳴るわ、駆けこんでくるわ、騒然となった。大浴場の方は赤いお湯しかでない、部屋の水も赤い・・・香川で水が無いところへもってきて、生徒の人数が多く、タンクの底の赤さびがかきまわされてしまった、とのこと。気持ち悪くて歯磨きもできない、コンタクトも洗えない・・・女将が謝罪にきたけれど、謝罪されてもなんとも言いようがなく、教員はみんなむっつりしていた。女将が去ってから修学旅行担当のK先生が「けっ!何が○星旅館だ、黒星旅館じゃないか」とつぶやいたのを覚えている。後日談として、当時の生徒たちは現在36歳、小グループのクラス会なるものをよく開くので、先日、「修学旅行、どう思った?」と聞いてみたら、あっけらかんと「楽しかったよ」でした。めでたし、めでたし。